« 「夏の終り」byオフコース | トップページ | オリンピック山 (後編) »

オリンピック山 (前篇)

 裕樹の3年4組では、ここのところ「缶蹴り」が流行っていた。
知っての通り、「缶蹴り」とはかくれんぼの一種で、鬼は見つけた人の名前をいいながら、立ててある空き缶を倒さないようにタッチしていくあれである。
 業間休みと、昼休みともなると4組の男子たちは一斉に缶蹴りに出かける。場所はグラウンドの横にある「オリンピック山」だ。
 この山は標高2メートルくらいの人工の山で、中にオリンピックのシンボルのように端が五色に色づけされた土管が、これまたシンボルのような形で埋められていた。
鬼はこの山の頂上に缶を置き、その他の人を探すのだ。
要領の悪い裕樹は頻繁に鬼にされてしまう。そしてクラスのリーダー的存在の慎二は、きまって裕樹に意地悪をするのだった。
 山頂は見晴らしが良いようで、意外と悪く、山腹にある茂みに隠れられたり、埋められている土管に隠れられたり、にぶい裕樹はただでさえ、一度鬼になるとなかなか抜け出せない。中腹にいる友達を確認しているうちに、別の友達に缶を蹴られてしまうし、時には慎二が音頭をとって一斉にみんなが飛び出て来たりする。全員の名前を呼ぶ途中であせって缶を倒してしまったり、呼び終わる前に蹴られてしまったりする。運悪く鬼になってしまったとき、裕樹はいつも終わりごろには半べそをかいていることも多かった。
 その日も最初から慎二の工作で、じゃんけんに負け、ずぅーっと鬼ばかりだった裕樹はさすがに我慢ができず、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴っても教室へ戻らなかった。「オリンピック山」の土管の中に隠れてひとり泣きじゃくっていた。「缶蹴りなんか、この世からなくなってしまえばいいのに・・・」そう心の中で繰り返しながら・・・

Kousya

|

« 「夏の終り」byオフコース | トップページ | オリンピック山 (後編) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/514503/42367047

この記事へのトラックバック一覧です: オリンピック山 (前篇):

« 「夏の終り」byオフコース | トップページ | オリンピック山 (後編) »