柿の実色した水曜日byふきのとう
ふきのとうと出会ったころのおはなしです・・・
中学の頃、そのころお世辞にも流行っているとはいえない「ふきのとう」というアーティストが少し気になっていた。たまたまFMで聴いた「春雷」という曲が印象に残ったことと、趣味で弾いていたギターの情報を集めるために読んでいた雑誌「ギターブック」によく記事が載っていたからだ。そのころ「ふきのとう」は大きなヒット曲もなく、もちろん友達の中でも知ってる人はほとんどいなかった。
ある日、昼休みにこっそりギターブックを読んでいると、隣のクラスのメグがひょっこりやってきた。彼女とは小学校1年の時、同じクラスだったことからの友達で、女子の中では気楽に話せる、気のおけない存在だった。
「へぇ、Katz、こんなの読んでんだ。」
「うん、ギター少し弾けるようになったんだよ。」
「ちょっと見せて、あっ!ふきのとう載ってるじゃん!」
「ふきのとう・・知ってるの?」
「うん、ちょっとだけね。Katzは?」
「僕もちょっとだけ。えっと春雷だったかなぁ?ラジオで聴いていいなぁって。」
「わたしもちょっとだけ。柿の実色した水曜日、知ってる?」
「知らないなぁ?」
「わたしレコード持ってるのよ。貸してあげよっか?」
「ほんと?うれしいなぁ。聴いてみたいよ。」
「んじゃ、明日持ってくるよ。」
次の日メグは約束通り、レコードを持ってきてくれた。
柿の実色・・・というよりも麦藁色?といった感じのメルヘンタッチなイラストが描かれたジャケット。
「へぇ、なんかかわいいジャケットだね。」
「でしょ。なかなかいい曲だよ。私のお気に入り・・・」
うちに帰ってさっそく聴いてみた。
アコースティックギター&オカリナ?のシンプルで素朴なイントロ。ミディアムなワルツ調のリズム。つぶやくような歌い始め。そして偶然の再会を期待するストーリー。二人の淡い思い出を回想するサビ。なんといっても僕は2コーラス目の「いつものくせの右下がり・・・」ここが目に浮かぶようですっかり歌の世界に引き込まれた。レコードがすり減るといけないから、さっそくテープへダビングして何度も聴いた。
「ありがとう!いい曲だねぇ。曲もいいけど、歌詞がとっても気に入ったよ。」
「でしょ、でしょ!あの右下がりのとこなんかいいよねぇ。」
「僕もそこが気に入ったんだ。情景が目に浮かぶようでさ。」
「なんか・・うれしいな。Katzに気に入ってもらえて・・・」
「ギターで練習してみるよ。上手になったらきかせてあげるね。」
「うん、うん、待ってるわ。がんばってね!」
そう言ってくれたメグの笑顔が、なんだかいつもよりキラキラして見えた・・・
あれからはや30年近く・・・弾き語れるようにはなったけど、結局きかせてあげる機会は訪れていない。僕もすっかりオヤジになったけど、メグもきっとおばさんになっているのだろう。どこかで元気に暮らしているだろうか?この曲を聴くたびに思い出します。
「今度君に いつ逢えるかな 偶然街で 逢えたなら・・・」
| 固定リンク
| コメント (4)
| トラックバック (0)
最近のコメント